
2021.12.10
森の循環が、 環境保全にも、経済貢献にもつながる。BOTANISTが目指すべき、森の機能とは。
2021年に開始した、BOTANISTの森づくり。10月には、植栽を行いました。 機能する森とは、どのような森なのか。未来へ向け、森が担うべき役割とは。北海道大学で森林政策学の研究を行う柿澤宏昭教授にお話を伺いました。
森の循環が、 環境保全にも、経済貢献にもつながる。BOTANISTが目指すべき、森の機能とは。
植えて育てるだけじゃない、使うことを意識した森へ。
BOTANISTは2021年より、北海道の美幌町での森づくりを開始しました。
BOTANISTの森は、どのような森を目指していくべきなのか。自然環境における森の役割や、これからの森づくりで期待できることについて、北海道大学農学部の柿澤宏昭教授へ伺います。
柿澤教授が強調するのは、森の循環について。森は植樹や育成に注目が集まることが多いものの、それを使うことの重要性も意識しなければならないと言います。
「資源としてみたとき、森林は再生が可能な資源です。適切に育った木を伐採し、加工して使い、その場所にまた木を植えて、育てることができる。再生が不可能な資源の代替物として、大きな期待をすることができます。具体的には、化石燃料の代わりに木材からできた燃料を使うこと。あるいは、建材としては鉄やコンクリートに替わるものになり得ます」
森を育てて維持するだけではなく、大切なのはそれを適切に使っていくこと。循環する森を意識することで、森は機能するものになると柿澤教授は続けます。
「特に最近では、ゼロカーボンの下で木材を活用して炭素を固定することが政策的にも重要なものとして位置づけられています。森林・木材の活用は、そういった点でも注目されるものであるでしょう」
多様性のある森は、多様な影響をもたらしてくれる。
植栽したり森を管理したり、木材として使用したり。そういった森の使い方とは別に、森の存在そのものがその土地の環境にとってプラスの影響があることも、柿澤教授のお話からは考えることができます。
「例をいくつかあげると、まずは森の水源かん養機能です。これは、森の周辺にある水資源を保全したり、洪水を抑制したりする機能のこと。それから、北海道では耕地防風林と呼ばれて風から農地を守ることに森が役立っています。自然災害の被害を抑え、我々のいる土地を守ってくれる役割も期待されるんですね」
また柿澤教授曰く、森の生み出す影響には地域経済の活性化も考えられるのだそう。
「森林がある地域というのは、人口過疎地域と重なっているところも多い。森林を適切に活用することで、雇用を生み出したり、地域の産業を生み出したりといったことへつながります。持続的な森づくりは、持続的な地域づくりとも言えます。」
さらにポイントは、多様性のある森をつくることだと柿澤教授は言います。
「戦後の日本は針葉樹林が圧倒的に増えていたのですが、最近になって広葉樹林の存在が見直されるようになり、森でも多様性を維持しようとする動きが強まっています。BOTANISTがつくろうとしている森も、広葉樹を中心とする森ですよね。多様な森が重要なのは、森に住む生物が多様だからです。原生的な森が好きな生物もいれば、若い森林を好むものもいるし、住みやすい場所も様々です。そう考えると多様性のある森が、生物の多様性の守っていることになる。さらにいえば、森の生態系は川や海の生態系にも影響を与えるため、森の豊かさを守ることはそのまま川や海の豊かさを守ることにも直結しているといえるのではないでしょうか」
森に関わる全ての人が、連携・協働するあり方を。
森を循環させ、多様な森として守っていく。そのことは、SDGsのゴールともつながっていることだとされています。
「SDGsとは、国連サミットで採択された持続可能な開発目標。そこでは17の目標が掲げられています。17の目標のうち、森づくりによって貢献できるものはいくつもあります」
「たとえば森を守ることはそのまま、【15】陸の豊かさも守ろうへ向けたアクションとなります。そして森の生態系は、川や海の生態系と密接に関係しているため、これは【14】海の豊かさを守ろうへもつながります。化石燃料の代わりとして木材を使うことを推進できれば、【7】エネルギーをみんなにそしてクリーンににも寄与できると思います。もうひとつ意識したいのは、【12】つくる責任つかう責任です。これは、森に関わるすべての人への責任を問いかけたものだと受け取ることができるでしょう。」
持続可能な形で生産された森林からの生産物。これらをつくり、かつ、使う立場として、主体的に、考えながら取り組みを進めていかなければなりません。BOTANISTの森も、今後行政や自治体など、様々な人が関わり、連携・協働していくことによって、より大きな貢献に繋がっていくことができるでしょう。